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★8 改正情報 Pick Up:平成15年度 民法改正の概要
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平成15年7月25日、第156回国会において、「担保物権及び民事執行制度の改善のた
めの民法等の一部を改正する法律案」が成立しました。この法律案は抵当権の実行
手続を実効化するために、従来から執行妨害的な事例が問題となっていた短期賃貸
借制度を廃止し、滌除制度を改善した上で存続することを主たる内容としており、
民法や民事執行法・保全法にも影響を与える大きな改正です。法案の提出理由は以
下の通りです。

<提出理由>
 抵当権等の担保物権の規定を整備し、かつ、担保権の実行手続その他の執行手続
 の実効性を向上させるため、短期賃貸借制度の廃止、民事執行法上の保全処分等
 の要件の緩和、扶養等の義務に係る債権に基づく強制執行における特例の創設等
 の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 また平成15年7月9日、第156回国会において、「人事訴訟法案」が成立しまし
 た。これにともない、民法・親族編の一部が改正されることになります。

 これらの法律案はいずれも、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内にお
 いて政令で定める日から施行する」とされているため、平成16年4月1日までに施
 行される可能性が大きいと言えます。その場合には、平成16年度以降の司法試験
 等各種資格試験における出題範囲に含まれることになります。

 ここでは、改正法の概要を簡単にまとめておきます。もっとも、現時点では改正
 による具体的な変更、新たな論点の発生等が明らかでない部分もあることをご了
 承ください。


《概 説》
◆ 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案につ
  いて
 一 短期賃貸借
  1 今回の改正により、短期賃貸借制度が廃止され、その代替として明渡猶予
    期間が規定された(395I)。また、抵当権者の同意を得た賃貸借に特別に
    対抗力を与えることが規定された(387I)。
  2 従来、抵当権の目的物の利用権と価値権の調和の観点から、わが民法では
    短期賃貸借制度が採用されていた。これにより、抵当権に劣後する賃借権
    であっても、短期賃借権であれば抵当権者・買受人に対抗できることとさ
    れていた(改正前395本)。
    しかし、この短期賃貸借制度については、従来から濫用の弊害が問題とさ
    れており、不動産競売を阻害する主要因として同制度を廃止すべきという
    主張が根強かった。
  3(1) そこで、今回の改正により短期賃貸借制度は廃止された。これにより、
     抵当権設定後に、抵当目的物について賃貸借契約が締結された場合、そ
     れが短期賃貸借であっても原則通り抵当権者・買受人に対抗できないこ
     ととなった。
     もっとも、正当な賃借人を保護する必要性は否定できず、改正法は正当
     な賃借人保護にも配慮している。すなわち、改正法は短期賃貸借制度を
     廃止する代替として、建物の賃貸借について明渡猶予期間を規定した。
     これにより、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づき、抵当
     権の目的たる建物を競売手続の開始前より使用または収益を為す者等
     (395I(1)(2))は、買受人の買い受けの時より6ヶ月を経過するまでは
     その建物を買受人に引き渡す必要がなくなった。但し、買受人が賃料の
     支払いを催告したにもかかわらず、賃借人が相当期間内に賃料の支払い
     を怠った場合には、明渡猶予期間の適用はない(395II)。
   (2) 次に、今回の改正により、抵当権に劣後する賃貸借であっても、抵当権
     者の同意を得たもので、かつその同意が登記された場合に対抗力を与え
     るという制度が創設された(387I)。賃貸用物件については、賃借人が
     入居していることが価値を高めることもある。このような場合、賃借権
     の対抗を認めることが抵当権者、抵当権設定者、賃借人の利益にかなう
     ことから規定されたものである。

 二 滌除
  1 今回の改正で滌除制度の名称が、抵当権消滅請求に変更された。また、増
    価競売の制度は廃止され、抵当権者が抵当権消滅請求を受けた場合の対抗
    措置を普通の競売の申立てでよいとし、抵当権者は買い受けの義務を負わ
    ないものとされた(382、384)。抵当権消滅請求に対して、(1)抵当権者
    が一定期間内に競売の申立てをしない等によって承諾が擬制される
    (384)か、又は、抵当権者が第三取得者から提案があった金額を承諾し
    た場合で、かつ、(2)第三取得者がその金額を支払うか又は供託した場合
    には、抵当権は消滅する(386)。
    この改正は、従来の滌除制度が抵当権者にとって過大な負担となり、
    また、滌除制度が濫用される弊害が生じていたことから、行われたもので
    ある。
  2 また、この滌除制度の改正に伴い、第三取得者への実行通知の廃止(改
    正前381)、抵当権消滅請求をなしうる時期の変更(382)、競売申立ての
    期間の変更(383(3))、消滅請求者の限定(378)といった改正がなされ
    ている。

 三 一括競売
   従来、一括競売は抵当権設定者が築造した建物に限って認められていたが、
   今回の改正で抵当権設定後に築造された建物であれば、第三者が築造したも
   のであっても、抵当権者は一括競売を申し立てることができるとされた
   (389)。
   この改正は、抵当権設定者と第三者が結託し、第三者名義の建物を築造する
   ことにより、抵当権の実行を妨害する例が増えている(土地の買受人はこう
   した建物を収去することができるとはいえ、買受人に建物収去についての負
   担がかかってくる結果、売却価格が下がってしまい抵当権の実行の妨害とな
   る)ことから、その弊害を防ぐために行われたものである。

 四 その他
  1 先取特権
    今回の改正で雇人給料の先取特権を拡大して労働者保護を図るために、雇
    人の先取特権の範囲が拡大された。すなわち、306条2号の「雇人ノ給料」
    という文言が「雇用関係」に変更され、また、改正前に存在した未払給料
    のうち6ヶ月分という被担保債権の限定が撤廃された(308)。
  2 債権質
    今回の改正では、債権証書が存在する指名債権であっても、原則として証
    書の交付を質権の成立要件としないものとされた。ただし、指名債権のな
    かでも、記名社債や指図禁止手形、指図禁止小切手等、債権証書が必ず存
    在し、その交付がなければ権利の設定、移転ができないものについては、
    証書の交付が質権設定の効力発生要件とされている(363)。
  3 371条
    今回の改正に伴って、判例において賃料債権に対する物上代位が認められ
    ていることの弊害(賃料を抵当権者に持っていかれてしまい、賃貸人たる
    抵当権設定者が管理費用を捻出できず、物権が荒れてしまうという弊害)
    への対処法として、民事執行法に抵当不動産の管理制度が導入された。こ
    の管理制度が導入されたことから、抵当不動産の競売開始のときに加え
    て、管理開始のときからも抵当権の効力が及ぶことが明らかとなるよう
    に、371条の文言が改正された。
  4 根抵当権
    今回の改正で、根抵当権の担保する元本の確定事由を定めた改正前398条
    の20第1項第1号が削除され、また、根抵当権者設定者からの元本確定に加
    え、根抵当権者からの確定請求も認められた(398の19)。

 五 経過措置について
   今回の改正法には、改正法施行日までに発生した法律関係については、なお
   従前の例によるとの経過措置が設けられている(附則第1条〜第6条参照)。

◆ 人事訴訟法案の成立にともなう、民法・親族編の改正について
 一 人事に関する訴えの管轄の変更にともなう文言の変更
   744条1項、747条1項、804条、805条、806条1項、806条の2、
   806条の3第1項、807条の「裁判所」の文言が「家庭裁判所」に変更された。
   これは、民事裁判を国民がより利用しやすいものとする等の観点から人事訴
   訟手続法が廃止され、人事訴訟法が制定されたことにともない、人事に関す
   る訴えが家庭裁判所の専属管轄になったために、民法・親族編の「裁判所」
   の文言が「家庭裁判所」に変更されたものである。

 二 婚姻の取消しについての準用規定の変更
   749条の準用規定が、「第766条乃至第769条」から「第728条第1項、第766条
   から第769条まで、第790条第1項ただし書並びに第819条第2項、第3項、
   第5項及び第6項」に変更された。
   これは、婚姻が取消された場合に、従来は、姻族関係の終了、子の氏、親権
   者等は解釈に委ねられていたが、今回の改正にともない明文の規定が置かれ
   たものである。

 三 文言の平易化
   「但し」が「ただし」に、「乃至」が「〜から〜まで」に、「取消」が「取
   消し」にされる等の文言の平易化がなされた。

※文字化け防止のために、丸数字は括弧数字で表記しました。

                                 以  上

 

司法試験メールマガジン(L-mail)No.137 2003/10/08号より引用
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